第20話:【二十世紀の文明】SNSの狂騒と、黄金色に輝くCOEDO瑠璃
吾輩は猫である。名前はソーセキ。
我が主人は、文明の利器というものに振り回されやすい男である。
漱石の描いた『猫』では、苦沙弥先生が電話や電車といった「二十世紀の文明」の発展に文句を言いながらも、そのスピード感に圧倒されていたが、我が主人が現代で翻弄されているのは「SNS」なる文物の狂騒であった。
プレオープンを控え、少しでも店の知名度を上げようとX(旧Twitter)やInstagramのアカウントを開設した主人だったが、これが完全に裏目に出ていた。
「……ソーセキ、見てくれよ。近所のオシャレカフェの投稿、いいねが3000もついてる……それに比べて俺の『おすすめの古本紹介』は……いいねが『1』だ。しかもこれ、押し間違えた俺自身のいいねだ……」
スマートフォンの画面を凝視しながら、主人の顔は見る見るうちに青ざめていく。他人の華やかな投稿やバズっている数字と自分を比べ、勝手に落ち込み、勝手に敗北感を味わっているのだから世話がない。
「SNSマーケティングだの、インフルエンサー活用だの……現代の文明は便利だけど、精神をすり減らすスピードも桁違いだな……」
ため息をつきながら画面をスクロールする指がピタリと止まった。通知欄に、一通のダイレクトメッセージが届いていたのである。
『いつも素敵な古本の紹介を楽しみにしています。開店したら絶対に行きますね!』
たった一人の、見知らぬ読者からの温かい言葉であった。数字の波に呑まれかけていた主人の心に、小さな灯火がぽっと点灯した瞬間であった。
「……そっか。大勢にウケようとしなくていいんだ。たった一人でも、届く人にちゃんと届いていれば……」
主人はスマホを伏せると、自分へのご褒美にと冷やしておいた瓶ビールを取り出した。川越が誇るクラフトビール「COEDO(コエド)ビール」の『瑠璃-Ruri-』である。
トクトクとグラスに注ぐと、澄み切った黄金色の液体と、きめ細やかな白い泡が立ち上る。
一口ゴクリと飲むと、爽快な喉越しとともに、高品質なホップの鮮やかな香りとクリアな苦味が口いっぱいに広がった。
「……うわぁ、体に染み渡る。雑味がなくて、すごく透明感があるな……」
数字の狂騒や他人の評価という雑音を、このプレミアムピルスナーのクリアな旨味が綺麗に洗い流してくれた。大切なのは大勢の狂騒ではなく、目の前の透明な誠実さなのだと、主人は黄金色のグラスを見つめながら深く納得していた。
主人はすっかり憑き物が落ちたような清々しい顔で、コタツに深々と腰掛けた。
吾輩はカウンターから飛び降りると、雑音から解放された主人の背中へ「ひょい」と飛び乗ってやった。
「うぐっ……ソーセキ。お前の乗る重みだけは、画面越しじゃ伝わらない本物の質感だな」
主人は苦笑しながら、落ちないように背中を丸めて手でそっと支えてくれる。
――まぁ、今宵はお前の背中が少しばかり温かいから、許してやるがな。
【今回の聖地&川越スポット】
- スポット: 古本と珈琲の店(川越の路地裏)
- 川越グルメ: COEDOビール 瑠璃-Ruri-(協同商事 コエドブルワリー)
- 小ネタ: 黄金色の輝きと白色の泡のコントラストが美しい、川越発の上質なプレミアムピルスナー。クリアな喉越しと爽快なホップの香りが、SNSの数字や周りの狂騒で乱された心をすっきりとリセットしてくれる。

コメント